山の神がいる山、白神山地

「人の影響をほとんど受けていない原生的なブナ天然林が世界最大級」と評価された白神山地。かつては、「弘西山地」とも呼ばれていました。全体の面積は13万ヘクタールで、74%が青森県、残りが秋田県です。

世界遺産登録以前から保護されてきた山地で、もともとと登山道以外の道はなく、特に中心地域へは現在も道は存在しません。中心部のほとんどは立ち入り禁止区域として保存され、たとえ入山したとしても林道すらないため、踏破は困難です。

マタギの山

マタギとは、東北地方でおこなわれてきた集団での狩猟方法です。クマを捕獲することから「熊とり」とも呼ばれますが、クマだけを取るわけではありません。マタギは、夏場は農業などを営み、冬場に集団で狩りをします。白神山地のような密林地帯に小屋を建て、数日間住み着いてカモシカやクマを捕獲。現在はカモシカ猟が禁止されているためもっぱらクマを狙います。10名程度のメンバーがそれぞれ、追い立てるもの、先回りするものなど役割分担をして仕留めます。

マタギ言葉という独特の言葉があり、独自の文化もあります。山を「神の集まる場所」と神格化し信仰して、クマを「神からの授かりもの」と考えます。仕留めた後には独特の呪文をとなえました。現在は禁猟区の広がりにより、マタギ文化の消滅が危惧されています。

ブナの山

ブナは生活にあまり役立たない木のため、伐採されることが少なくそのために白神山地には原生林が残されたと言えます。およそ1万年前からブナが生息し始め、以来1万年にわたりほとんど耕作されないままに、現在まで残っています。

ブナの寿命はせいぜい200年ほどで樹木の中では短い方です。朽ち果てると、他の樹木や生物の栄養源となります。非常に美しい山ではありますが、人が入らないことから世界遺産となった地であり、観光として訪れても、眺望のよい場所にいくのはかなりハードです。

この山の地層は新しく柔らかい岩石でできており、それが急速に隆起してできた山のため、 地滑りの多い地域となっています。山の一部が欠けて下に集積した土の上に、ブナが大量に繁茂しました。崩落した物質でできた土地のため、雨が降ると割れ目にしみ込み、それによって、美しい湧き水の豊富な土地ともなっています。

人間のほとんど入ることのなかった密林は、神の住む山として、永遠に保存したい山です。